【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

孤独死の腐敗した部屋を見る際の心構え

用心 孤独死

身内の方が孤独死をされて、ご遺体のあった部屋に入ることになりましたか?
もしくは、大家として貸し出している部屋に孤独死があり、何かの事情で部屋に立ち入ることとなっているでしょうか。
そのまま部屋に入るにも、何か臭いがする、害虫が発生しているなどの場合はつい躊躇することも多いでしょう。
今回は、孤独死のあった、腐敗したご遺体のあった部屋を見る際の心構えについて、また立ち入った部屋での作業についてなどを説明していきます。

1.死後、早い場合は2〜3日の時間が経過すると注意

いわゆる孤独死など、部屋で誰にも看取られずに本人が死を迎えられると、その後ご遺体がそのまま部屋に放置される形になります。
孤独死とは、何らかの事情で家族、親族や地域コミュニティから縁遠くなっていた方が、病気や不慮の事故、自殺、事故に巻き込まれるなどの形で、お一人で死を迎えられることを指します。
孤独死される方は、場所が自宅の場合、普段から訪れる方や連絡をとる方が少ない状態にあるので、長期間そのご遺体が発見されないまま部屋にそのままになることが多いです。
このような状態ですと、早ければ2日、遅くとも7日経過したころには、ご遺体の腐敗がすすみ、独特の腐敗臭からなる死臭を放つようになります。
人間の身体は動物の生肉と同じなので、室温程度の室内にそのまま何の処置もなくご遺体を放置している状態だと、上記のような時間の経過により、ご遺体が自然に腐敗していくことになります。

またその死に際して、血液や体液が部屋に飛び散った状態のままになっていることもあります。
気温の高い夏場や、冬場のエアコンや暖房器具がついたままになった状態などでは、腐敗はさらに早く進みます。
こたつや布団に入ったまま亡くなられた場合など、その箇所だけ急速にご遺体の腐敗が進むこともあります。

エアコン

また、亡くなられた方が肥満体型であった場合、皮下脂肪が多いため、やはりご遺体の腐敗が早く進む傾向にございます。
ご遺体の腐敗の過程、またはその後に発される臭いはかなり強烈です。
普通の生ごみなどの腐敗臭よりも激しい、人間の感覚に強く訴えるのが、このご遺体の腐敗臭である死臭です。

こういったご遺体の強い腐敗臭、死臭は、ご遺体を運び出したあとも部屋の建材や遺された遺品にしみつき、長く残ってしまいます。
孤独死のご遺体のあった部屋に入る際は、まずこの強烈な臭いについての対策を行うべきでしょう。
この臭いはとても強烈なので、消臭をされていない状態で一般の人がこういった部屋に立ち入ると、吐き気や頭痛などの体調不良を起こしたりすることすらあります。
十分に、ご遺体由来の死臭については対策してから、部屋に立ち入るのが良いでしょう。

またその後に同じ部屋を利用する予定があるのであれば、なるべく早い時期での徹底的な清掃と消臭が必要になります。
こういった臭いのしみつきは、時間がたてばたつほど激しくなり、臭いについても強くなるため、放置していて状況が好転することはありません。
また多くの場合、腐敗したご遺体のあった部屋では、遺体から染み出た体液や、血液などによる凄惨な現場となっていることがあります。
こういった部屋を一般の人がそのまま見ることは、視覚的に大きなショックとなり、遺族が立ち入る際などはその死のうえにさらに大きなショックとなってしまう場合もあります。
一般の人が自力でご遺体のあった部屋の清掃、消臭を行うのはかなり困難です。

では、どのような手段でこういったご遺体のあった部屋の事態の収拾を行えばよいのでしょうか。
具体的には、特殊清掃と呼ばれる、ご遺体があった部屋の清掃を専門に行う業者に清掃を依頼する必要があります。
一般に賃貸物件の退去時に行われるハウスクリーニング業者とは違い、特殊清掃業者はご遺体の影響のある部屋の清掃に特化した技術や設備を持っています。

MEMO

養生を用いて、ご遺体由来の体液や血液の影響が広がらないように物品を処分したり、臭いについても、ご遺体由来の腐敗臭に対して入念な清掃、消臭を行ってくれます。
特殊清掃の作業では、血液や体液の付着した物品を養生した上で運び出して処分し、またオゾンを利用した脱臭機や、業務用の薬剤を用いた脱臭が行われます。

注意

この際オゾン脱臭作業の前には、部屋の桟などに積もったホコリ、換気扇の中、ドアや窓など空気の通り道、部屋に遺された物品にも死臭はしみついていますので、普段あまり目につかないような場所についても徹底的な清掃(フルクリーニング)が行われます。

注意

また、腐敗したご遺体から染み出た体液や血液が、部屋の建材に付着したりしみこんだりした箇所に関しても、場合によっては壁紙や床材をはがして交換するリフォーム作業を含めた徹底的なフルクリーニングを行ってくれます。
リフォーム作業が大規模になる場合などは、専門業者との連携を行うこともありますので、特殊清掃業者はご遺体のあった部屋の事態の収拾に役立つことでしょう。

また、ご遺体のあった部屋の多くは、ご遺体由来の血液や体液により、一般の人には衝撃的な状態になっていることがしばしばあります。

また、ご遺体由来の血液や体液からの、いろいろな伝染病への感染の可能性もあるため、不用意に一般の人は血液や体液に触れないようにすることが重要です。

こういった観点からも、遺族が遺品整理のために部屋に立ち入る前に、特殊清掃業者に依頼して部屋の清掃を行ってもらうことが最善といえます。

MEMO

かかる費用の相場としては一般的なハウスクリーニングよりも高額になり、1Kの部屋での特殊清掃では平均価格として30万円∼50万円程度となりますが、一般の人がたやすくできる作業内容ではないことを考えると妥当な値段といえます。

2.害虫や、害獣の発生にも注意

害虫

ご遺体由来の血液や体液、また生活していく過程で出た生ごみなどが部屋にそのままの状態で放置されていた場合、臭いの発生に対してもう一つの問題として害虫や害獣の発生があります。

害虫にはゴキブリやハエ、ウジ、その他の虫があげられます。
害獣とはネズミなどが当たります。
こういった害虫や害獣の発生に対しても、特殊清掃業者への依頼は有効です。

特殊清掃の業者は、害虫の幼虫や卵なども含めた徹底的な駆除を行ってくれます。
臭いについても同様のことがいえますが、害虫や害獣は孤独死のあった部屋だけにとどまらず、同じ建物の別の部屋や、近隣の建物にも影響を及ぼします。

注意

近隣の建物にまで害虫や害獣が大量発生すること、それらが移動していくことなどによる無用な近所トラブルを避けるためにも、害虫や害獣については発生していたら徹底的に駆除しておくことが大切です。
この害虫の発生についても、放置しているうちに事態が解決することは残念ながらありません。

早い段階での駆除、清掃をいかに行うかが肝心となってきます。

3.部屋に入って、遺品整理をする場合の注意

孤独死のあった部屋に立ち入る際の多くは遺品整理についてや建物の現状確認ののために立ち入る場合でしょう。
遺品整理とは、故人の部屋に残されたもののうち、遺族が特定の物品を故人の思い出をとどめる遺品としてとり分けたうえで、リサイクルできるもの、粗大ごみやごみとして処分するものに分け、それぞれ各種手配を行うといった流れで行われます。

遺品整理

まずは遺された物品のなかから、遺族が遺品として保管する物品をよりわけていく作業が最初になります。
これまで遺品整理の作業について代行したり、立ち会ったりしてきた特殊清掃業者によると、遺族が遺品として持っていくべきものは主に3種類あるということです。

3-1.1つめは、貴金属や現金、通帳、銀行のカードなどのそのまま金銭的価値のあるものです。

鑑定
いうまでのないことですが、換金できる可能性のあるもの、また現金などをそのまま処分して捨ててしまうのは大変もったいないことですので、まずはこういったものを部屋の中で探しましょう。
貴金属や現金、通帳、銀行のカードなどの貴重品については比較的わかりやすい場所、家の中心の箇所に保管することが多いため、見つけやすい場合も多いです。

3-2.次に、アルバムや手紙など、故人との思い出に関連した品、生前の姿がわかる記念写真などです。

思い出の品
こちらについては、故人のありし日の姿を偲ぶ上で重要なものといえます。
こういった品は部屋に飾られていることも多いものですので、すぐにいくつかは見つかることでしょう。
故人の思い出につながるものとして必ず取り分けておきたいところです。

3-3.最後に、メガネなどの生活用品や着物、アクセサリーなど、故人が好んで使っていた身の回りの品があげられます。

MEMO

こういった物品を親族で形見分けとして分けて持って行ったり、故人を偲ぶ品として手元に置いておくことで、故人の思い出をとどめることができます。
アクセサリーなどは、最初の持ち主がなくなったあとにも代々受け継がれるものとして代表的です。
いつも身に着けていたメガネなどの生活用品も、先に述べた故人の生前の姿をとどめた写真と合わせて、より心に残る思い出の品といえるでしょう。

MEMO

孤独死が起きてしまったあとの部屋に立ち入って遺品整理を行う際は、こういった3種類の品について気を付けて取り分けておくとよいでしょう。

また、こういった物品の仕分け作業を遺族自身が行うと、どうしても気持ちが沈んでしまったり落ち込んでしまいがちになることもあります。

特殊清掃業者は、部屋の清掃だけでなく、こういった遺品整理についても請け負っています。
遺族に確認しながら、遺品として取っておく品、不用品として処分する品の仕分けを行ってくれます。
特殊清掃そのものとは別料金になることが多いですが、遺族が不必要に落ち込んでしまうことは、故人を送り出す上でもよいことではありません。
こういった依頼をすることも選択肢の一つとして残しておくとよいでしょう。

4.「孤独死の腐敗した部屋を見る際の心構え」まとめ

  1. 遺体のあった部屋に残された腐敗臭は強烈なものになるため、部屋に立ち入る前に特殊清掃業者に清掃を依頼しておくことが最善といえます。
  2. 遺品整理についても、特殊清掃業者に依頼することができます