多くの特殊清掃業者のウェブサイトの料金表を見ると「特殊コーティング」または「床下防臭コーティング」など記載されており、具体的にはどんなコーティング作業をするの?と疑問を感じておりませんか?
この記事では「特殊コーティング」の意味、役割、効果、種類などを解説していきます。
「特殊コーティング」の役割と過剰な宣伝には注意
我々、特殊清掃業者が行う「特殊コーティング」とは、例えば部屋などで孤独死された場合、床下のコンクリートスラブなどに体液が染み込んだ箇所の異臭を封じ込めるために塗装などで被膜を形成します。臭いの元をオプラートするイメージです。
孤独死などが発生した際、タンパク質が腐敗することで発生する死臭を封じ込めなければならない訳ですから、通常のコーティング作業よりも強固な被膜を必要とします。
そのために市販品の塗料などを、そのまま塗布するのでは被膜が薄くて防臭効果が弱く、数種類の塗料をブレンドしたり、塗料以外のモノをブレンドしたり、防臭効果が高くなる独自のコーティングを生み出しております。
だから「特殊コーティング」と言われる訳ですが、コーティング技術の無い同業者の中には市販品の塗料を、そのまま塗布しているのに「特殊コーティング」と告知している場合も多くございます。
特殊清掃のどんな場面で特殊コーティングが必要なのか?
ここでは防臭効果の高い特殊コーティングを必要とする場面を解説いたします。
床上で亡くなった場合、発見が遅いと身体は溶け出し大量の体液が発生して、床下まで浸透いたします。
この際の特殊コーティングの良し悪しが施工後、臭気に大きく影響します。


この際、床下がコンクリートスラブならコンクリート内部まで腐敗臭の原因である体液が染み込んでしまいます。
そこでコンクリートスラブの表面上から、ナノエッジ(小型ポリッシャー)等を活用してアルカリ電解水などで、可能な限りの清掃を行った後で、特殊コーティングを行い異臭を封じ込めます。

あまりにもコンクリートスラブに脂分が多い場合、そのまま特殊コーティングしても、死臭が抑えられないことが大半です。この場合、550度まで対応できるヒートガンで脂分をある程度、蒸発させる必要性があります。
見栄えを良くするために塗装範囲を養生用布粘着テープを貼り付けして特殊コーティングを塗布いたします。


梁(大引)や柱へ特殊コーティング
この際、床下の梁(大引)や柱が汚染された場合、木材内部まで腐敗臭の原因である体液が染み込んでしまいます。
そこで梁(大引)や柱の表面上をカンナ掛け行い、可能な限りの清掃を行った後で、特殊コーティングを行い異臭を封じ込めます。

体液は脂分を含んでおり、梁(大引)や柱の表面上をカンナ掛け行わないと、特殊コーティング(塗装)を塗布しずらい。
当たり前ですが、柱は絶対に切って除去できません。梁(大引)は絶対に切れない箇所ではありませんが、通常は切らないため、これらが汚染された場合は特殊コーティングを行い死臭を封じ込めます。
根太(ネタ)をコーティング


根太(ネタ)を切り落とし撤去の場合

根太の場合は、切り落としても良いし、特殊コーディングを行い死臭を封じ込めても良い。どちらにしろ、腐敗臭が抑えられば問題ない。
クロス(壁紙)の特殊コーティング

クロスを貼る際、糊にある種のボンド(企業秘密)を混ぜることで、石膏ボード(壁)とクロス(壁紙)との間に被膜ができて防臭効果が高くなる。このように塗料だけが特殊コーティングとは限らない。
特殊コーティングの建築塗料は大きく分けて2種類
事故事件現場の施工で活用する特殊コーティングは、大きく分けて「水性」と「油性(溶剤)」のタイプがあります。
双方とも孤独死現場などで活用した際の「メリット」と「デメリット」が存在しており、詳しく解説いたします。
「水性」塗料の場合
- シンナーなどの溶剤が配合されていない為に、悪臭がない
- シンナーが含まれていない為に、火気の心配がない
- 溶剤中毒にならない
- 値段が安い
- シンナー臭がしないために、早く引渡しが出来る
- 活性炭塗料や備長炭塗料を含めると防臭効果が高い
- 塗膜の寿命が短い
- 塗布できない素材もある
- ツヤが落ちやすい傾向
- 低温での施工が難しい
- 油性と比べて作業工程が多い
最近の同業者の傾向としては、水性を好む方が増えております。但し、水性の場合、耐用年数に大きな差があるため、耐用年数の長い塗料メーカーを選択しなければならない。(孤独死現場なら耐用年数は8年以上を基準にしたい。なぜなら8年も経てば、染み込んだ体液等の臭いが風化すると言われているからです。)
一般的な水性塗料を市販品そのままで塗布すると防臭効果が弱く、活性炭塗料や備長炭塗料をサンドイッチ工法で仕上げる必要性を考えなければなりません。
「油性(溶剤)」塗料の場合
- 金属にも密着できる
- 乾燥時間が短い
- ツヤを維持しやすい
- 強靭な塗膜を作る事が出来る
- FRP液体を混ぜることで最強の防臭効果が生まれる
- シンナーの臭い(トルエン臭)が強い
- 価格が高い
- 保管の際、火気に注意
- 扱いに手間がかかる
溶剤を塗布すると部屋の中が強いシンナー臭にマスキングされて、施工完了しても腐敗臭の有無がしばらく確認できない。そのため、シンナー臭が治まる迄、待つ時間が必要で引き渡しが長くなる傾向が強い。
特殊コーティングで活用する建築塗料の材質と耐用年数の目安とは?
塗料の材質、耐用年数、メリット、デメリットをわかりやすく表にしました。
建築塗料の材質と耐用年数について | |||
---|---|---|---|
\ | 耐用年数 | メリット | デメリット |
アクリル系塗料 | 4年∼6年 | 値段が安い | 耐久性や防汚性能は他に劣る |
ウレタン系塗料 | 7年∼10年 | 密着性高く場所、規模、用途を問わず万能な性能 | シリコン系に比べると耐久性が劣る |
シリコン系塗料 | 10年∼15年 | 高い防汚性能を持ちコストパフォーマンスは最高 | — |
フッ素系塗料 光触媒塗料 | 15年∼20年 | 今後主流になっていく予想 | 施工に専門的なノウハウ必要 |
特殊コーティング作業の流れ
孤独死現場の特殊コーティングでは作業そのものは、水性の方が作業工程も多く、下塗りなどの乾燥時間も多く必要で手間はかかりますが、塗装完了後はシンナー臭がしないために、腐敗臭の有無がすぐに確認できます。
そのため、水性なら引渡しが早くできるメリットございます。
水性の塗料を活用する場合
水性を活用するならアルカリ性洗浄剤(アルカリ電解水)などで塗装面を綺麗にする。
中・上塗りと塗装面の密着性を高める役割で、最初に接着効果の高い水性のプライマリーを塗布します。
水性の塗料を塗布します。
消臭効果の高い備長炭塗料(黒色)を塗布します。(サンドイッチ工法)
水性の塗料をもう一度塗布します。
油性の塗料を活用する場合
溶剤を活用するならラッカーうすめ液などで、塗装する前には塗装面を綺麗にする。
中・上塗りと塗装面の密着性を高める役割で、最初に油性用下塗り剤(プライマリー)を塗布します。
FRP液体と油性塗料(7:3)をブレンドしてFRP硬化剤をほんの少々混ぜて、塗布することで強固なコーティング剤になる。
仕上げは油性塗料のみを塗布します。
下塗り(プライマリーやシーラーと呼ぶ)の種類と特徴
シーラー、プライマーは、下塗り塗料(1回塗り)と言われ塗装面と中・上塗りの付着をよくする役割があり、この下塗り塗料にも水性と油性があります。
この下塗りがしっかりしていないとすぐに中・上塗りが剥がれてくる可能性があります。そのため、塗装面の状態がよくても必ず下塗りはします。
- シンナー臭がしない
- 浸透性が低いので、あまり吸い込まない
- 乾燥時間が3~4時間と長い (下地の状態や季節・気候による)
- シンナー臭が強い
- 浸透性が高いので、よく吸い込む
- 乾燥時間が30~60分と短い (下地の状態や季節・気候による)
まとめ|特殊清掃で防臭効果の高い特殊コーティングとは
- 防臭効果を高める特殊コーティングは水性の方が塗布完了まで手間はかかるが、水性塗料は臭気がしない為に油性よりも早く引き渡しができる
- 防臭効果を高める特殊コーティングは油性なら素早く塗布完了するが、シンナー臭がしばらく漂い、腐敗臭の有無の判断が出来ず引き渡しが遅くなる傾向にある
- 防臭効果を高める特殊コーティングは塗装だけでなく、クロスを貼る際の糊にある種のボンド(企業秘密)を混ぜるコーティング工法もある
- 脂分が多い場合、特殊コーティングする前にヒートガンを使い、ある程度の脂分を蒸発させる必要性がある






