IICRC国際資格の特殊清掃(Trauma and Crime Scene Technician)とは

Trauma and Crime Scene Technician

この記事は、遺品整理や原状回復の仕事に携わっていて国際的に通用するスキルを身につけたい清掃業界のプロ、あるいは転職を視野に入れた未経験者に向けて書かれています。
特に、アメリカ発祥のIICRCが認定するTrauma and Crime Scene Technician(TCST)資格に興味を持ち、「アメリカで取得するにはどうすればいいの? どんなメリットがあるの?」と疑問を持つ読者が検索してたどり着く想定です。
記事を通して、TCST資格の概要から具体的な試験情報、キャリア形成までを網羅的に解説し、検索後すぐに行動へ移せる実践的なロードマップを提供します。

目次

IICRC国際資格と特殊清掃の基礎知識

IICRCとは? アメリカ発祥の清掃・復旧国際機関

IICRC(Institute of Inspection Cleaning and Restoration Certification)は1972年にアメリカで設立された非営利団体で、カーペット清掃や水害復旧、火災復旧、カビ除去など30種類以上の国際資格を運営しています。
北米では保険会社や行政が推奨基準として採用しており、現場で資格保持者が作業を行わないと保険支払いが受けられないケースもあるほど信頼性が高いのが特徴です。
日本でも2010年代から注目され、孤独死や事件現場の増加に伴いTCSTを中心に受講者が急増しています。
IICRC資格は年1回の継続教育単位(CECs)取得が必須で、資格取得後も最新技術をアップデートし続ける仕組みが整っている点が国内民間資格との大きな違いです。

Trauma and Crime Scene Technician(TCST)が扱う作業範囲

TCSTは「事件・事故・自殺・孤独死」などで発生した血液・体液・組織片の除去や、感染症リスクの高い病原体の消毒、脱臭、構造材の解体・撤去までを包括的にカバーします。
さらに、警察や検死官との連携、証拠物件の保全、遺族への心理的配慮など、技術だけでなく倫理的・法的な観点も評価対象に含まれるため、高度な専門知識とメンタルスキルが求められます。
作業はバイオハザード3分類に応じたPPE(個人防護具)の選定、負圧機械でのエリア封鎖、ATP測定器による衛生検査など科学的根拠に基づいて進められ、国際基準のS540プロトコルを遵守する点が国内他資格との大きな相違点です。

国際資格を持つ業者を選ぶメリット

IICRC認定業者に依頼すると、作業品質だけでなく法律・保険面でもメリットがあります。
まず、北米で策定されたS540規格は感染対策のエビデンスが明確で、クラスター発生時のリスクを大幅に低減できます。
次に、保険請求書が英語基準のフォームで発行可能なため、旅行者の事故物件や米軍住宅など外資系保険会社にも受理されやすい利点があります。
さらに、作業後にIICRCロゴ入りの完了証明書が発行され、オーナーが売却や賃貸時に“専門業者による除菌済み”と明示できるので資産価値の毀損を抑止できます。

  • 感染対策の科学的根拠
  • 英語保険フォームで海外保険も対応
  • ロゴ付き完了証で資産価値保護

TCST資格のカリキュラムと試験

TCSTコースは最短2日間の座学+1日間のハンズオン実習が基本構成で、座学では血液媒介病原体(BBP)の生態、OSHA準拠の安全基準、化学薬剤の希釈計算などを学びます。
実技では、人体由来汚染物を模した豚血を用い、UVライトで汚染範囲を確認しながら洗浄→消毒→密封廃棄を一連で体験。
最後にATPルミノメーターで数値が準拠基準以下に下がるかを検証し、可視化データをレポート作成するまでが必須課題です。
講師はIICRC認定インストラクターで、受講人数は15名以下と少人数制を採用し、安全確保と質疑応答の時間が十分に確保されています。

  • 座学:BBP・OSHA・薬剤学
  • 実技:豚血モデルで洗浄消毒
  • 評価:ATP測定→レポート作成

試験形式・合格率の最新データ

IICRC-license

試験は50問の択一式マークシートで60分、合格ラインは正答率75%以上です。
問題は英語原文ですが、日本人によるグループ受講では日本語訳付きの二言語試験冊子が配布されるため語学面のハードルは限定的。
2023年米国会場の合格率は約91%で、事前に公式ハンドブックの章末クイズを解いていれば十分に到達可能な難易度です。
不合格時は30日以内ならオンライン再試験(有料55USD)が受けられ、合格すれば本試験合格と同等に扱われます。

開催国受験者数合格率
米国1,350名91%

オンラインと対面、受講スタイルの選び方

パンデミック以降、IICRCはZoomとLMS(学習管理システム)を活用したオンライン講座を正式に認可しました。
オンライン版は座学がフルリモート、実技はVRシミュレーター+提出動画審査方式で、地方在住や日程調整が難しい人に人気です。
一方、対面コースは本物の臭気や重機を扱えるため現場感覚が身に付き、初学者や機材の操作経験が少ない人に推奨されます。
費用差はオンラインの方が約15%安く、交通費も不要ですが、ネット環境や撮影機材の準備が別途必要となる点に注意が必要です。

オンラインは英語のみとなります。英語が分からない方は通訳付きの対面のみとなります。※IICRCの許可をいただければ、通訳付きで日本人グループの受講も受けられます。

項目オンライン対面
費用約65,000円約78,000円
臨場感
機材体験限定的実機操作

アメリカは日本よりもかなり物価が高いため、対面にて企業団体で10名以上まとめて受講する場合でも、往復の飛行機代や現地のホテル代10日間・食事代などを合わせると、一人当たりの予算は80万円以上となります。

資格の取り方ガイド

申し込み手順と必要書類

受講申込みは①IICRCのウエブサイト講習一覧から希望日程を選択→②オンラインフォームに個人情報を入力→③本人確認書類(運転免許証またはパスポート)をアップロード→④クレジット決済または請求書払いで完了という流れです。
企業団体で10名以上まとめて受講する場合は法人窓口にメールし、請求書一括払いが可能。
受講票とテキストPDFは入金確認後3営業日以内にメールで届き、当日は印刷またはタブレット表示が許可されています。
安全教育上、18歳未満は受講不可、またB型肝炎ワクチン接種が推奨(必須ではない)と明記されているので確認しましょう。

学費・教材費の目安

TCSTの受講料は対面78,000円、オンライン65,000円が平均で、テキスト代と試験料が含まれています。以下の表は主要資格の費用です。

資格名受講費用
IICRC TCST65,000〜78,000円

特殊清掃員になるには? 向いてる人の特徴

精神的タフネスと倫理観

事件・事故現場では遺族の悲痛な感情が渦巻き、視覚的にも衝撃の強い状況に直面します。
TCST保持者は血液や体液の処理技術だけでなく、グリーフケアの基礎知識を備え「遺族を二度傷付けない」という倫理観が不可欠です。
また、SNSでの写真流出や内部情報の漏えいは業界生命を絶たれるため、守秘義務を徹底できるセルフコントロール力も求められます。
こうした精神的タフネスは経験と継続的なカウンセリング受診で強化でき、企業によってはEAP(従業員支援プログラム)を導入しているため、入社前に制度の有無を確認しておくと安心です。

防護服での長時間作業に耐える体力

バイオハザード対応のフルフェイスマスクと防護服は、真夏で体感温度50度近くに達します。
平均的な現場作業は2〜4時間の連続稼働が多く、インターバルごとに水分と電解質を補給しても熱中症リスクが高いのが現実です。
心拍数を一定に保てる有酸素能力と、狭所でしゃがみ姿勢を維持できる下肢筋持久力が必須となるため、週2〜3回のジョギングやスクワットトレーニングで基礎体力を養っておくと採用面接でも好印象です。
加えて、N95マスク装着時は呼吸抵抗が上がるため、呼吸筋を鍛えるスピロメーターを利用した自主トレも効果的とされています。

キャリア形成のロードマップ

入門期(0〜1年)は清掃補助として現場の流れを学び、ATP測定や廃棄物パッキングといったサポート業務で実績を積みます。
次に、TCST取得後の成長期(1〜3年)はチームリーダーとして見積書作成やクライアント対応を担当し、年収400〜500万円のゾーンに到達可能。
さらに、関連資格のFire and Smoke DamageやOdor Controlを追加する拡張期(3〜5年)では総合復旧コンサルタントとして独立・起業を視野に入れ、年収800万円超えも珍しくありません。
このように段階的な資格取得と現場経験をリンクさせることで、着実にキャリアアップが図れます。

求人・バイトの探し方と業者の選び方

求人サイト・業界団体・SNSの活用法

大手求人サイトでは「ビルメンテナンス」「遺品整理」のカテゴリにTCST歓迎求人が掲載されていますが、競争率が高いため更新通知を設定して即応募が鉄則です。
IICRCや日本除菌脱臭サービス協会の会員企業リストも要チェックで、直接メールすると非公開求人を得られるケースがあります。
最近ではTwitterやLinkedInで現場写真と共に採用情報を発信するベンチャー企業も増加しており、フォロー&DMでカジュアル面談につながることも。
複数チャネルを併用し、履歴書送付前に企業文化や作業動画を事前リサーチすることでミスマッチを防げます。

アルバイトから正社員へステップアップ事例

大学在学中に週末バイトとして入社→半年後にTCST取得→卒業と同時に正社員登用という成功事例が多数報告されています。
アルバイト期間中は夜間や休日の緊急出動に柔軟対応することで「現場耐性」を証明でき、評価ポイントが高いのが特徴です。
また、会社負担で資格取得させてもらえる場合は、3年間の勤務継続を条件とする返還特約が付くことが多いので、契約書をよく確認しましょう。
正社員化後は現場手当・夜勤手当・資格手当の三重加算により、初年度から年収350万円超えも十分に狙えます。

IICRC認定業者に応募する際のチェックポイント

  • 企業が保持するIICRC資格者人数(TCST以外も含む)
  • 感染症対策マニュアルにS540が採用されているか
  • 完了証明書にIICRCロゴを付与しているか
  • EAPや定期健康診断など従業員ケア体制の有無

現場作業のリアル

初動対応から完了検査までの清掃プロセス

STEP
警察・消防の現場解放後、チームはまずリスクアセスメントを実施し、作業区域をテープと陰圧機で封鎖します。
STEP
血液・体液を凝固剤で固着させ、ヘパフィルター搭載バキュームで一次除去。
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次に洗浄剤→中和剤→消毒剤の三段階ケミカル処理を行い、
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乾燥後にオゾンや水酸化ラジカル生成機で脱臭。
STEP
ATP測定値が基準以下であることを確認し、
STEP
作業写真と測定データを添付した完了報告書を提出して終了です。

必要機材と安全装備チェックリスト

分類代表機材用途
PPETyvek防護服・N95マスク・ニトリル手袋血液媒介病原体からの防護
洗浄・吸引ヘパフィルターバキューム固形・液体汚染物の除去
消毒次亜塩素酸ナトリウム噴霧器ウイルス・細菌の不活化
検査ATPルミノメーター汚染度の数値化

作業中のメンタルケアとチーム連携

現場終了後に5〜10分の『ブリーフィングタイム』を設け、各メンバーが感じたストレスを共有することでPTSDリスクを軽減できます。
また、スマートウォッチで心拍・ストレス指数をリアルタイムモニタリングし、異常値が出たらローテーションを組むなど、最新テクノロジーを活用したケアも有効です。
チーム連携面ではインカムと作業アプリでタスクを可視化し、責任分担を明確にすることでミスや二次感染を防止します。

アメリカと日本の特殊清掃市場比較

アメリカ本部の最新動向と日本支部の取り組み

米国では新型ドラッグ『フェンタニル残留物』の除去が新たな市場となり、IICRCはS540の改訂版で薬物対応章を追加しました。
一方、日本支部は孤独死急増を受け、自治体と連携した家主向け無料ウェビナーを開催し、国際基準の普及を加速中です。
両国の動向を把握することで、将来必要となるスキルセットを先読みし、早期に研修へ投資する判断材料となります。

法規制と保険制度の違い

アメリカではOSHA規則が労働者安全を厳格に定めており、違反時は高額な罰金が科されます。
対して日本には直接的なバイオハザード清掃専用法は存在せず、廃棄物処理法や労基法での解釈運用が中心です。
保険制度では米国はクリーニング費用が州法で補償対象となる場合が多い一方、日本では家主や遺族の自己負担が原則で、損害保険の特約加入がないと費用回収が難しいのが現状。
この差異を理解し、顧客に適切な保険提案を行えるかが信頼を勝ち取る鍵となります。

グローバル資格を活かしたキャリア拡大

TCSTは北米・EU・アジア太平洋34カ国で認知されており、海外復旧会社への転職や国際災害ボランティア派遣に参加する際のパスポート的役割を果たします。
日本在住のままでも、駐日米軍施設や外資系ホテルの事故対応案件を受注でき、単価が国内平均の1.5〜2倍に跳ね上がるメリットがあります。
英語報告書作成スキルを強化することで、プロジェクトマネージャーとしてリモート管理業務に携わり、身体負荷を軽減しながら年収アップを実現する事例も増えています。

まとめ: IICRC国際資格で広がる特殊清掃キャリア

資格取得後に得られる3つのメリット

  • 国際基準の技術力を証明し、高単価案件を獲得できる
  • 海外保険・外資系クライアントとの取引がスムーズ
  • 継続教育で最新知識をアップデートし、市場価値を維持

次のステップと学習リソース

TCST取得後は「Odor Control Technician」や「Fire and Smoke Damage Technician」など、隣接分野の資格を追加取得することで、総合リメディエーション企業へのステップアップが可能です。
IICRC公式LMSのオンデマンド講座や、米国の業界誌『Cleanfax』のテクニカル記事を定期購読することで、英語力と専門知識を同時に伸ばせます。
本記事をきっかけに、一歩踏み出して国際資格の扉を開き、特殊清掃という社会的意義の高いフィールドでキャリアを切り拓いてください。

日本でIICRC国際資格のTrauma and Crime Scene Technician取得企業とは

IICRC国際資格 Trauma and Crime Scene Technician 取得企業
Spread株式会社(屋号:4RC)東京都大田区https://spread-g.co.jp/
マインドカンパニー合同会社東京都大田区https://www.mind-company.jp/
株式会社フォーレスト東京都杉並区https://www.forest-cdt.co.jp/
株式会社アーネスト千葉県千葉市花見川区https://re-earnest.com/
株式会社ラスティック岡山県和気郡和気町https://rusticjapan.co.jp/
株式会社 ダスメルクリーン福岡県粕屋郡宇美町https://dusmel.com/
株式会社 森元クリーン鹿児島県鹿屋市https://morimotoclean.com/
株式会社High-G沖縄県宜野湾市https://www.okinawahigh-g.com/
株式会社エスコートランナー埼玉県桶川市https://escort-runner.com/
株式会社UNISons神奈川県横浜市旭区http://unisons.jp/
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この記事を書いた人

2008年より遺品整理・特殊清掃の業務に関わって今日までたくさんのノウハウを蓄積出来ました。2023年には清掃業界の先進国であるアメリカへ渡り、RSAで研修を受け【TCST】Trauma and Crime Scene Technician (特殊清掃)や【FSRT】Fire and Smoke Damage Restoration Technician (火災復旧)に関する『 IICRC 』の国際資格を取得しております。

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