【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

孤独死現場に最適なオゾンショックトリートメント法とは?

オゾン脱臭機

1.孤独死の現場となった部屋や、強烈な臭いのしている空間、場所について悩んでいませんか?

今回は、近年画期的な方法として脚光を浴びている、オゾンショックトリートメント法(OST法)による建造物内のいやな臭いの消臭(脱臭)について説明します。
オゾンショックトリートメント法は、孤独死のあった部屋の消臭、火災現場となった部屋のススの臭いの消臭、部屋全体にしみついてしまったたばこのヤニ臭などに広く効果を発揮します。
オゾンショックトリートメント法での消臭の実際や、詳しい作業方法についてなど、これからオゾンショックトリートメント法での消臭効果を考えられている方向けの情報についてお伝えします。
もちろん、建物や部屋に染み付いた臭いの消臭についてお悩みの一般の方にも役立つ情報になるでしょう。

2.オゾンショックトリートメント法とは?

オゾンショックトリートメント法とは、臭いの発生している部屋を密閉し、高濃度のオゾンを大風量で循環させることで、薬剤などを利用したこれまでの消臭法よりも効果的に消臭を行う作業法のことです。

イメージしにくい言葉が続きますが、順に説明していきます。
まずオゾンという物質についてご案内します。
オゾンショックトリートメント法にて使われるオゾンという物質は、酸素原子が3つ結合してできた強い酸化性を持つ物質になります。
よく知られているところでは、地表の25キロ上空にあるオゾン層にあり、地表を宇宙からの紫外線より守っている物質です。

MEMO

オゾンは常温常圧では薄青色の気体で、沸点では紺色の液体、凝固点では濃紫色の固体になります。
塩素の約6倍、フッ素に次ぐ酸化力を持ち、除菌、脱臭、浮遊菌の除菌、カビやぬめりを取る、害虫忌避などの主に5つの効果があります。
消臭や除菌について非常に効果のあるこのオゾンという物質は、空気中の酸素に高電圧をかけることで生成できます。
特殊な薬剤を必要とせず、比較的リーズナブルに生成することができます。

オゾン層

また、臭いの物質に反応して臭いの分解を進めるため、臭い物質の量に比例して分解速度も早まります。
一方、オゾンという物質は、自身の不安定な特性から、貯蔵ができません。
空気中に放出してもすぐに酸素へと変化してしまいます。

さらに高い酸化力で、ゴムや金属、電子機器の腐食をも進めてしまうため、一般に暮らす部屋の中に充満させると、脱臭効果があっても一部の物品を腐食してしまう事態が起こります。
加えて重要なことですが、高濃度のオゾンに長時間さらされることは人体にも有害なため、取り扱いの際はマスクや防護具の適切な利用が必要です。

では、オゾンについて説明したところで、このオゾンショックトリートメント法という消臭法そのものについて説明していきます。
前述したとおりオゾンは強い抗酸化作用を持ち、消臭作用を持つため、これまでもオゾン酸化分解法という名称で、小規模にオゾンを発生させて消臭を行う方法が行われてきました。
しかし、オゾンの強い消臭効果を十分に利用するためには、オゾンの濃度と室内での循環のための風量が重要な事項となり、これまでの一般的オゾン酸化分解法の規模では十分ではありません。
オゾンの消臭効果はオゾンの量に比して高くなることがその理由の一つです。

またもう一つに、オゾンは空気より重いため、室内で発生させると床付近に気体のままとどまってしまうことから、風で部屋全体に循環させる必要があります。
こういったオゾンの特性や、もたらされる効果を踏まえ、新しくオゾンの濃度と、消臭を行う室内でのオゾンの循環のための風量の基準が設けられました。
そして、この一定の基準を満たす条件下でのオゾンを用いた消臭作業をオゾンショックトリートメント法と呼称する取り決めがなされています。

MEMO

オゾンショックトリートメント法の定義、条件は以下に挙げる4項目になります。

  1. 1つ目には、オゾンの濃度が一時間当たり7500mg以上であることです。
  2. 次に2つ目に、オゾンを室内に循環させるファンの風量が1時間当たり260立法メートル以上であることです。
  3. 残り2つの条件は、高温多湿でもオゾン生成量が低下しないこと。
  4. 時間の経過によっても同様にオゾン生成量が低下しないこと。

オゾンは温度や湿度に比例して臭いの分解速度を速めるため、使用の際は部屋の暖房器具を利用したり、ヒーターを同時に設置するなどの方法が採られます・。
無論その対策がオゾンそのものの生成量に影響してはいけないので、オゾンショックトリートメント方が行えるオゾン生成器の条件に、高温下でのオゾン生成量に低下のないことが求められます。

さらに実際の消臭の現場では、送風ファンを用いてオゾンを室内で循環させるほかに、脚立や押し入れなどの段を用いて部屋の中で高い位置にオゾン生成器を設置するといったことも行われます。

3.オゾンショックトリートメント法を行う際の注意、作業方法

それでは次に、オゾンショックトリートメント法を実際に行う際の注意、作業方法について説明していきます。
作業前の事前準備として、対象の部屋を密閉する作業が必要です。

MEMO

オゾンは常温常圧下では気体のため、ドアの隙間から漏れ出てしまいます。
オゾン自体にもやや臭いがあることから、近隣への影響、苦情を避けるためにも、部屋の外に通じる隙間はテープで十分な密閉(養生)が必要です。

次に、オゾンの酸化作用の影響を受けて劣化してしまう物品に関しての養生が必要です。
オゾンはゴム類や電子機器を腐食してしまうため、移動できるものは移動させ、移動できないものに関しては直接オゾンに曝されないようにビニールシートで覆います。

脱臭前の部屋

基本的にはオゾン脱臭を行う際は、部屋の中が空になっており、クロス(壁紙)を剥がして、家中のクリーニング作業を行った後で、稼働させるため電化製品等に養生を必要とすることは、ほとんどございません。

また、ペットは言うまでもありませんが、植物に対しても悪影響を与えるため、適宜移動するか同様に養生する必要があります。
火災報知器についても、高濃度のオゾンで誤作動を起こしてしまう恐れがあるため、取り外すかビニールシートで覆いをして養生するのがよいでしょう。
他、絵画や掛け軸なども変色の恐れがあるため、移動や養生をしておく必要があります。

MEMO

さらに、オゾンの作用が良く働くようにするために室温調整を行います
オゾン脱臭の有効温度は、10℃から30℃以内と言われておりますが、より高温の方が臭いの元を多く発生できるため、その有効温度の中で25℃から30℃程度が理想的になるため、夏場ではエアコンで冷やし、冬場ではハロゲンヒーターなどを用いて部屋を暖めるなどの手段を用いり、25℃から30℃程度に設定してオゾン脱臭に適した環境を作っておきます。

石油ファンヒーターについては燃料臭が発生してしまい、それがオゾンと反応する分、全体の反応が鈍ってしまうため逆効果となり、利用は望ましくありません。
部屋内に臭いの素になっている物質がある場合は、可能な限り除去しておくことも肝心です。

孤独死の現場での亡くなられた方の血液や体液、また火災現場でのスス、たばこのヤニなど、臭いを発する部分そのものがある場合は、できるだけ除去しておきます。
そして、発生している臭いの種類に応じて消臭剤を室内に散布しておくことも重要です。

主にアンモニア系の臭いには強酸性、体臭やカビ臭には強アルカリ性の消臭剤が効能を持ちます。
また消臭剤を散布することで室内の湿度が上がるため、よりオゾンの臭気への反応効果を上げることができます。

全ての準備が完了したら、オゾン発生器を室内に設置して運転を行います。
その後部屋を開放して換気を行い、空気を完全に入れ替えたのち再び部屋を密閉、オゾンを発生させます。

途中で消臭剤が乾いた場合は重ねて散布を行います。
オゾンショックトリートメント法では、1回のオゾン発生のみで作業が完了するわけではありません。
換気と密閉、オゾン発生を繰り返し行うことによって、高い脱臭効果を発揮します。
作業時、オゾンが部屋全体に行き渡るように、オゾン発生器は部屋の中央近く、高い位置に置くことが大切です。

これは前述したとおりオゾンが空気より重く、床近くにたまってしまう性質があるためです。

また換気時の空気の入れ替えには、別に蛇腹ダクトや送風機を用意し、効率的に行うとよいでしょう。
空気入れ替え時には部屋の戸や窓なども全開にします。

初回のオゾン発生の際など、臭気の強い状態でオゾンを発生させると、光化学オキシダンと呼ばれる白いもやが発生することがあります。
この状態では十分な消臭効果が発揮できず、また人体にも有害なため、もやが発生した場合は一旦オゾンを止めて換気を行う必要があります。

MEMO

また分解された一部の臭気のもとの物質も、安定化合物となって室内にとどまるため、こちらも換気を行い室外に排出してからオゾンを発生させる必要があります。
1日のオゾン発生はどんなに長くても10時間を上限とすることが良いでしょう。

オゾンショックトリートメント法での作業には、1回のオゾン発生について2~3時間、さらに2~3時間の換気を行ったのち、オゾン発生の流れを1日3回などのペースで行うため、約70平方メートルの現場で2日ほどかかります。

無論、たばこの臭いなど軽微な臭気であれば半日、孤独死の現場や火災現場では2日、さらに臭いの強さや部屋の広さによりかかる時間は変動します。
また作業時、換気やオゾン発生器のオンオフ等で人がオゾンの発生している中に入る必要がありますが、防護マスクや防護メガネの使用が無論必要です。

注意

オゾンはその濃度にもよりますが人体に有害です。
消臭で用いられる濃度、1~20ppmでは主に呼吸困難、疲労感、肺のうっ血などの症状が現れるため、作業者の健康を守る観点から防毒マスクの着用は絶対に守りましょう

4.「孤独死現場に最適なオゾンショックトリートメント法とは?」まとめ

  1. オゾンショックトリートメント法はこれまでのオゾン酸化分解法よりさらに効果のある、高濃度オゾンとそれを室内で循環させるための送風による強力な消臭法である。
  2. オゾンは強い酸化作用を持っており、消臭、除菌などの大きな効果をもたらす。
  3. オゾンは人体に有害でもあるため、オゾンショックトリートメント法をおこなう際は保護具の使用や近隣への配慮が必要である。