【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

孤独死現場の連帯保証人がいない場合は

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1.賃貸物件の連帯保証人と連絡が取れなくなっていませんか?

賃貸物件の借主に不測の事態がおき、事態を収拾しようにも連帯保証人と連絡がとれない、そもそも契約の際に連帯保証人をつけていなかった、などのケースでお困りの大家の方が、このぺージをご覧になっていますでしょうか?
もしくは、親族に連帯保証人になってくれと頼まれたものの、どういった義務が発生するのか疑問に思ってためらっている方でしょうか。
このページでは、賃貸契約で連帯保証人がいない、または病気や高齢などでその義務を果たせない場合におきたトラブルの際、どういった対処をしていけばよいのか、について説明していきます。
また連帯保証人とは何か、不測の事態において連帯保証人がいない場合の法定相続人の役割についても述べていきます。

2.そもそも連帯保証人とは何か

MEMO

連帯保証人とは、賃貸契約などの際、主債務者である借主と同等の責任を負う立場にある人のことです。
実は、その明確な責任の範囲については法律では定められていません。
が、多くの場合、賃料の支払いや借りている部屋の管理などについて、借主と連帯保証人は同じだけの責務を負っていると考えられます。

また、仮に主債務者である借主に十分な財産がある場合でも、貸主は連帯保証人に賃料の支払いを代わりに求めることができます。
連帯保証人はこれを拒んだり、主債務者から先に取り立ててほしいという申し立てをすることができません。
また複数人で債務を分割することもできません。
「なるべく連帯保証人にはならないほうがいい」と社会の通説として言われるのはこのためです。

保証人

さて、賃貸契約の連帯保証人には通常以下の条件を満たす人物が選定されることが多いです。

  1. 2親等以内の親族であること。
    本人から見て、親もしくは子、祖父母の関係にある人であること。
  2. 定職についていること。
    継続した安定収入があることが求められます。
  3. 収入のあること。
    同じく、継続した安定収入があることの目安です。
  4. 高齢でないこと。
    あまりに高齢だと、連帯保証人が認知症になったり、契約の途中に寿命を迎えたりするリスクがあるとされます。

昨今ではこの条件をクリアできる親族が不在のため賃貸契約ができない人や、やむなく保証会社を利用する形で賃貸契約を結ぶ人もいるようです。
また賃貸契約によっては、複数の連帯保証人を必要とするケース、また連帯保証人をつけたうえで保証会社の利用が必要となるなど、より厳しい条件を求められることもあります。

3.具体的に連帯保証人の働きが必要になる局面とは

では、具体的に連帯保証人の働きや、義務の発生する局面とはどういった時なのでしょうか。
多くの人が真っ先に思いつくのは、借主からの賃料の支払いが滞った際に、貸主から連帯保証人に賃料の請求をする場合でしょう。

契約

近年増加傾向にある、「孤独死」「孤立死」が物件で発生した場合にも、貸主である大家としては最初に、借主の家族や親族、連帯保証人に連絡するでしょう。
「孤独死」「孤立死」とは、地域コミュニティや家族、親族との繋がりを断っていた状態の方が、誰にも看取られることなくお一人で病気、事故や事件、自殺などで最期を迎えられ、死後発見される場合を指します。
こういったお亡くなり方は大変痛ましいことです。

さらに、その死後におきることも痛ましい結果、現場となる場合が少なくありません。
お亡くなりになってから期間が経って発見されるケースでは、ご遺体、またご遺体由来の血液や体液によって建物の壁や床、調度品などが損傷されたり、強烈な死臭や腐敗臭を放ったり、またハエやウジ、ゴキブリなどの害虫の大量発生する場合が多いです。
これらは近隣の住民の方、階下の住民の方などにも影響を及ぼす深刻なトラブルとなる場合もあります。

そのため、「孤独死」「孤立死」のケースの多くは、部屋の原状復帰のために特殊清掃や、遺された家財道具や日用品などの遺品整理、場合によっては床材や壁材をはがしてリフォームする費用などがかかります。
その費用負担についても、貸主である大家から連帯保証人に請求することになります。

4.連帯保証人がいない場合は法定相続人へ連絡

「孤独死」「孤立死」の際、その物件の賃貸契約上の連帯保証人が高齢やその意思がない、連絡が取れないなどの場合もあります。
そういった場合はお亡くなりになった方の法定相続人に連絡するのが良いでしょう。
法定相続人とは、今回の被相続人であるお亡くなりになった方本人からみた関係で決まります。

まず、本人の配偶者がいれば、常にそれが相続人になります。
次に第一順位として本人の直系卑属があたります。

つまり子です。
子が死亡していた場合は孫が相続人となります。
養子であっても相続人になれますし、両親が婚姻関係になくても認知されている子や、
相続が発生した時点で胎児であった子も無事生まれれば相続人となることができます。
第一順位の相続人がいない場合は、第二順位である本人の直系尊属が相続人となります。
これは親、親が死亡していた場合は祖父母があたります。
実父母、養父母共に相続人となることができます。
第一順位、第二順位共にいない場合、第三順位として本人の兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹が亡くなっているばあいはその子、つまり本人からみて甥や姪が相続人となります。
こういった関係が適用されるのはすべて法律上の配偶者や子のみとなり、内縁の妻や夫、認知されていない非嫡出子は相続人となることができません。

多くの場合、法定相続人の関係にある人のうち1人が賃貸契約の連帯保証人になっている場合があります。
連帯保証人がスムーズに事態の収拾に当たってくれればよいのですが、そうもいかない場合もあるでしょう。
その場合は、他の親族である法定相続人に連絡する必要があるでしょう。

注意

ここで注意したいのは、連帯保証人が賃貸契約のみに対しての義務を負うのに対し、法定相続人は被相続人である借主本人の財産に対して影響してくること、また連帯保証人とは違い、その相続を放棄することもできる点です。
借主本人が部屋の価値を毀損し、その名義でマイナスの財産として入居時の敷金を超える債権が発生した場合、法定相続人がそのマイナスの財産を引き継ぐことになります。
しかし、法定相続人が相続放棄した場合は、マイナスの財産についても責任がなくなりますので、部屋の原状復帰にかかった費用を請求することもできなくなります。
法定相続人が相続放棄し、連帯保証人もその責を果たせない場合、最終的には大家自身が費用負担を引き受ける形にならざるを得ません。

そういった事態を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。

5.法定相続人をはじめ、遺族の方に歩みよる姿勢が大切

貸主である大家としては、「孤独死」「孤立死」の発生や、それによる部屋の設備への損害、臭いや害虫の影響などを、借主の過失による被害と考え、つい高圧的な態度に出てしまいがちです。
なるべく早くに特殊清掃や遺品整理、部屋の全面的リフォームを行ってほしいと、遺族である連帯保証人や法定相続人に迫ってしまうこともあるでしょう。

しかし、それはあまり得策なことではありません。
連帯保証人に支払いの意思や能力がなく、また法定相続人が相続放棄を行ってしまうと、最終的には家主の負担で部屋の原状復帰にかかる費用を負担することになってしまいます。
たとえ、法定相続人である親族が相続放棄を行う予定であっても、心情的にできるだけのことをしたいと協力的になってくれるような姿勢づくりが、貸主である大家側の心がけるべきことです。

円滑に話し合う

貸主である大家としては、不幸な出来事があった部屋の全体のリフォーム費用、貸し出しができなかった期間の損失、またこれからの物件の貸し出しが困難になることへの補填など、さまざまな費用を借主側の親族である連帯保証人や法定相続人に求めたくなるかもしれません。
しかし、多くの場合はすんなりすべての額を借主側が払うとも考えにくいものです。
そもそも、「孤独死」「孤立死」の中でも、病死の場合はとくに自然死と考えられますので、その死に故意も過失もないものと法律的には考えられています。

つまり、家主から貸主側への損害賠償としての請求ができません。
自殺の場合は、部屋の逸失利益の損害賠償としての請求権が認められてはいますが、部屋の一箇所で亡くなった際の部屋全体、直接関係ない箇所までのリフォーム費用までを補填すべきという法律判断はあまりされていないのが実情です。
裁判に持ち込んだとしても、完全に貸主の訴えが認められるケースは少ないといわれます。

それよりも、不幸な出来事に気が動転している借主の状況に寄り添い、その能力でできるだけの費用負担を求めていく方が現実的だといえるでしょう。

まず、法定相続人がお亡くなりになった方の部屋の財産を一部でも処分すると、法定単純承認とよばれる自動的な相続の成立が起こります。
そのため逆に、法定相続人が相続放棄を検討している場合、部屋の財産の処分にあたる事態を恐れて、特殊清掃や遺品整理に応じてもらえない事態も起こりえます。

注意

特殊清掃が必要な現場では、時間の経過に従ってご遺体由来の血液、体液による部屋の床材や壁材などへの損傷、害虫の発生、強烈な死臭の発生などが激しくなる傾向があります。
ですので、事態が発生してからなるべく早く特殊清掃に取り掛かる必要性があります。

実際には、市場価値のない日用品を処分したり、死臭や害虫の発生箇所のみの清掃を行うだけであれば、相続放棄には影響のない場合がほとんどです。
この点を遺族である法定相続人によく説明することによって、特殊清掃や遺品整理に協力してもらえる可能性も高くなります。

法定相続人に相続放棄をさせず、またできる範囲での適切な協力、費用負担を仰ぐことで、事態の円満な解決を図ることができるでしょう。

6.「孤独死現場の連帯保証人がいない場合は」まとめ

  • 「孤独死」「孤立死」の際、その物件の賃貸契約上の連帯保証人が高齢やその意思がない、連絡が取れないなどの場合はお亡くなりになった方の法定相続人に連絡するのが良いでしょう。